本書は,S. Moorhead, M. Johnson, M. L. Maas およびE. Swanson を監修者として2013 年に刊行されたNursing Outcomes Classifi cation, Fifth Ed.(NOC 第5 版)の邦訳,日本語版原著第5 版である。初版が1997 年に,第2 版が2000 年に,第3 版が2004 年に,第4 版が2008 年に刊行されているので,第5 版は第4版から5 年間のアイオア大学成果分類チームにおける継続的な開発の賜と考えられる。さらに第5版から邦訳も前版までの医学書院からエルゼビア・ジャパンへとうつった。これに伴って監訳者もかわった。臨床現場における使い易さをより反映させるために監訳者に看護実践家を含んでいることも新しい。
さて,NOC 第5 版は490 の成果から構成され,そのうちの107 の成果は第5 版で新たに追加され,2 つの成果が削除された。7 つの領域には変更箇所はないが,第5 版から“類FF:健康管理”と命名された1 つの類が“領域Ⅳ:健康知識と行動”の位置づけとして新たに追加され32 類となった。この“類FF:健康管理”は,急性および慢性的な健康状態の自己管理に焦点があてられた類であり,この類に位置づけられた全16 の成果もすべて新しい成果である。医療機関の入院患者は超急性期および急性期に特化され,患者の多くは外来診療や在宅療法へと移行していることが,“領域Ⅳ:健康知識と行動”の刷新と関係していることは容易に理解できる。
本書の主要部分はPART 1 からPART 4 である。
PART 1 は, 第1 章 と 第2 章 から成る。 第1 章 は最新NOC 分類の土台となる部分が定義され説明されている。即ち,NOC とは何かという基本から,成果の測定方法,NANDA インターナショナル看護診断および看護介入分類(NIC)との関連性,測定尺度までがわかりやすく解説されている。よくある質問から,今後の展望までが網羅されている点も興味深い。そして, 第2 章は,臨床,研究,教育の場でのNOC の使用が解説されている。即ち,実践でNOC を使用するときの考慮点,臨床の場へのNOC の導入,電子システムへのNOC の導入,教育プログラムへのNOC の導入,研究へのNOC の使用,そして,NOC の成果を使用する際の申請までが,わかりやすく解説されている。わたしたちがNOC を臨床,研究,教育の場,そして電子カルテで使用しようとする場合はこの 第2 章 の熟読は必須であろう。
PART 2 は,NOC 分類法の概観である。即ち,分類法の歴史的背景,改訂の歴史,これまでの版の変更点,そして分類のコーディングについてが解説されている。490 もの成果を1つひとつ理解するのは並大抵ではない。分類法を十分に理解し,NOC を構造的に理解することこそ重要である。とりわけ電子カルテシステム下でNOC を使う人には,NOC 分類法の概観を根本的に理解することをお勧めしたい。
PART 3 は,本書で膨大な部分を占める成果である。成果名は五十音順に構成されている(原書はアルファベット順)。1 つひとつの成果名と定義,指標,測定尺度,そして成果内容の文献が収められている。
PART 4 は,NOC リンケージ: 健康パターンとNANDA-I と題され,NANDA-I 看護診断とNOC のリンケージがやさしく解説されている。そのうえで,NANDA-I 看護診断:2012–2014 の実在型看護診断およびリスク型看護診断,そしてヘルスプロモーション型看護診断のそれぞれ1つひとつの診断指標を測定するための成果のリンケージが表の中に提示されている。まさにS. Moorhead らが序文で,「これらのリンケージは規定的なものではなく,さまざまな状況や対象者の臨床データを用いて検証される必要があることを特に言及しておくことが重要である」と忠告していることは,わたしたち読者は決して忘れてはならないだろう。 最後に第5 版は今までにない邦訳を心掛けていることを付け加えておきたい。第1 に,第5 版は,0(ゼロ)点から邦訳している。前版までの邦訳はいっさい使用していない。第2 に,成果に含まれる複数の指標は,複数の成果の指標において使用されている。同じ指標であるにもかかわらず,成果が異なった時に異なった訳であっては標準化には至らない。そのために訳語の統一を図り標準化に近づけようとした。第3 に,臨床現場ではどの訳が最も現実的監訳者序文でフィットするのかという視点を取り入れ,原語の意味を失うことのないように現場志向的な訳語を採用している。
監訳者を代表して
黒田 裕子